地域の魅力

2021年12月23日 / 研究員 三浦 拓実

 「都道府県魅力度ランキング」が毎年話題になる。このランキングは民間の調査会社が年1回実施している消費者調査がもとになっている。2006年から継続的に行われているこの調査は、各地域の全国的な認知やイメージ形成、行動意向等を明らかにしており、報道番組やバラエティ番組を中心に大々的に取り上げられ、広く知れ渡るものとなった。

 「都道府県魅力度ランキング」に対する世間の認知度が高まった背景には、二つの理由があると考える。一つ目はランキングの構造である。一般的なランキングは上位が主役となるケースが多いが、このランキングでは47都道府県が全て順位付けされるため、下位が “悪目立ち”することになりがちだ。ここ数年は下位グループの顔ぶれが変わっておらず、マスコミは最下位の争いをしている自治体を面白おかしくいじり倒す。自治体側は、この調査結果がイメージや観光にマイナスの影響が生じる可能性があるとしてリアクションをする。そういった応酬が繰り返しメディアに取り上げられることで、認知度が高まったのではないか。

 二つ目は県民意識の存在である。260年も続いた江戸時代は幕藩制を採用したことで、地域によって人々の性格に差(お国柄)が生じたと言われている。廃藩置県から150年たった現在も、地域独自の体質等に根ざした気質は少なからずあり、自身の生まれ育った場所はアイデンティティーの一部として形成され、やがて県民意識となっていく。このような歴史的経緯から県民意識を持つ国民が多く、こうしたランキングに対して興味を引かれる人が多いのではないか。

 県民意識の存在を確認する機会のひとつに、他県民との関わりがある。私は群馬県出身なのだが、大学サークルで出身地を公表した際に出身地をやゆされ、初めて自身の県民性と他県民からの捉え方について意識した。当時、群馬県はインターネット掲示板で“グンマー”というネットスラングによってネタ化していたほか、「月曜から夜更かし」などのバラエティ番組での群馬の取り扱いの増加や、「お前はまだグンマを知らない」といったギャグ漫画の流行から、リアルの場でも群馬県民がいじられるようになったといえる。

 これは国内の話にとどまらない。海外留学した際には、現地で出会ったアメリカ人が「ぐんまのやぼう」という謎のゲームアプリの存在を私に教えてくれた。このアプリをプレイしたところ、群馬県の特産品を収穫し、貯めた得点で他の都道府県や世界、さらに太陽系の惑星を制圧して、それら全てを「群馬県」にしてしまうシミュレーションゲームだった。そのアプリを教えてくれたアメリカ人に詳しく話を聞いたところ、彼はまた他の国の友人からそのアプリを教えてもらったらしい。街中でたまたま出会った、日本語を全く知らない外国人の口から「Gunma」という単語が発せられ、複数の国で群馬の存在が認知されていることを知った時に、これは既にネタの域を超えており、群馬県民が知らない間に「群馬」はある意味ブランド化し、グローバル規模で広がっているように感じた。

 2021年度の「都道府県魅力度ランキング」では、下位に順位付けをされた自治体を中心に、調査に対する批判も見受けられる。各都道府県はブランド戦略室等を設置し、日々ブランド向上にいそしんでいる中で、好ましくない順位になった自治体の担当者としては、下位の順位は受け入れがたい結果だろう。実際には、地域の魅力は調査からは読み取れない要素も多分にあり、このランキングは本質的な順位を反映しているとは言い難いかもしれない。また、前述の群馬の例にあるように、こういったマイナスイメージを逆手に取るやり方もある。むしろ“キャラ付け”が明確化しているという意味では、他の都道府県よりもブランド向上のうえで有利という見方さえできる。地域の本質的な魅力を見出し、その魅力を価値として最大化させていくことが、各自治体のブランド戦略において有効なのではないだろうか。