観光素材としての祭り

2018年11月20日 / 研究員 府中 裕紀

 1990年代以降、地方都市中心部の衰退が著しい。都市の衰退は、人口や商業の流出だけではなく、地縁・血縁といった旧来の共同体の崩壊、人同士の触れ合いの希薄化とあいまっている。そうした都市中心部の崩壊に危機感を持った公的団体は、コンパクトシティなど再び都市中心部を活性化し、人が交流できる街づくりを模索し始めている。
 他方で、都市中心部では祭りやイベントが数多く行われており、近隣の居住者だけでなく周辺部からも沢山の人が訪れ、中心部に、ひいては都市に活気を与えてきた。したがって都市中心部が衰退している今、祭りを始めとしたイベントは、都市に活気を呼び込む重要な装置の1つとして捉えられる。
 同時に、祭りを支える要素として、旧来の地縁や社縁といった、これまで祭りを支えてきた基盤が崩壊しつつあり、祭りへの参加単位が個人へと変化し、かつてから都市で行われていた祭りは担い手不足や資金不足によって消えている。 その一方で,祭りだけで結びついた個人を中心的な担い手とした、全く新しい祭りが都市で相次いで誕生し、より観光的な要素を祭りに取り入れる動きが加速している。一例として、これまで安価もしくは無料であった祭り参加者に対する参加料を値上げしたり、祭りを見に来るお客様に対し、桟敷席の価格を上げたり、新たな付加価値を付与して、祭り見学・参加と食事などが一体となったパッケージ型の商品を造成し,積極的に販売する動きがみられる。
 これらの背景には、これまでの昭和的観光、すなわち「大人数でやってきて見物をする、一律的な観光」の魅力がなくなってきたことであり、テーマ性が強く、体験型要素を取り入れた「体験型観光」が、これからの主流となっていくことを意味する。その文脈で言うと、祭りとは、ある限定された場所と時間でしか味わえない非日常的空間に包まれることにより、音や熱気など独特の雰囲気を感じ、皆が一体になることができる、絶好の体験型観光の素材なのだ。
 一方、祭りにも弱点は存在する。それは実施期間が極めて限定されていることだ。実施期間が短いために希少性は高いが、極度なお客様集中を生み、ホテルが取れない、渋滞悪化、ゴミ処理問題などいった、経済損失につながるオーバーツーリズム(注)が発生しかねない。
 祭りには関わる関係者が数多く存在し、かつ、これまでは祭りと地域の施設や、自治体などとの連携が十分に取られていないため、こうした問題が発生しやすいといわれていた。しかし、これからの体験型観光を推進するため、また、地域を代表する観光素材として活用するために、乗り越えなければならない壁である。
 そうした丁寧な調整を行い、自治体や地元事業者等との連携が整えば、観光客にはわかりやすく魅力的な祭りとなり、地域にとっては誇り、かつ長期的に維持される祭りとなるであろう。

(注)観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せる状態(過剰な混雑)