【緊急寄稿】 第4回 最新の人口動向(修正版)

2023年11月7日 / 主席研究員 岸 泰之

 4回目の本稿では、首都圏で人口増加がみられる埼玉県さいたま市や千葉県流山市などのいくつかの郊外都市を取り上げて解説を試みる。

要約
・首都圏において過去5年間で人口増加が著しいさいたま市大宮区、同浦和区、流山市、印西市では、日本人も外国人住民もこの10年間で一貫して増加している。
・昼夜間人口比率に基づく地域特性からみて、さいたま市大宮区、同浦和区、印西市は、「業務集積都市」もしくは「住宅・業務混在地」と推定され、交通利便性、生活利便性とともに職住近接が実現している可能性があり、これらが人口増加の要因と推察できる。
・流山市の地域特性は、東京都心に就労・就学する人が暮らす「住宅地」であるが、隣接する柏市(柏の葉キャンパス)があることで職住近接も実現している可能性がある。

 

■さいたま市や流山市では「住みたい」人気が実際の人口増につながっている
 図表1の地図は、東京駅を中心とする50㎞圏において、直近5年間(2018~2023年)の総人口(日本人+外国人住民※1)の増減比率を表している。
 この地図を概観すると、30㎞圏内では概ね人口が微増傾向を示しているが、30㎞圏外では一部の市区を除いて人口は減少している。
 50㎞圏のうち、東京都心の4区(千代田区、中央区、文京区、台東区)や国分寺市、さいたま市の4区(西区、大宮区、浦和区、緑区)、千葉県の流山市、印西市、神奈川県の横浜市中区、海老名市では5%以上の人口増となっている。
 

      【図表1】2018~2023年の総人口(日本人+外国人住民)の増減率 ※2
 
    

 

 このうち、さいたま市大宮区の「大宮」駅、浦和区の「浦和」駅、流山市の「流山おおたかの森」駅は、各種「住みたい街ランキング」(図表2)において上位に列挙される駅であり、まさに人気と実際の人口増が結びついていると言える。
 

      【図表2】「住みたい街」ランキング ※3
 
    

 

■総人口が増えている都市は日本人の人口が継続して増えている
 この5年間で人口増加が顕著な都市のうち、特にさいたま市の大宮区と浦和区、流山市、印西市の4市区に着目し、まずそれぞれの総人口(日本人+外国人住民)の推移を見ることにする。
 図表3は、2013年を起点に2023年までの10年間の人口の伸び率を示している。
 この4市区の中では、流山市の人口の伸びが突出していることが分かる。これに次いで、印西市も人口が急増していることが分かる。
 一方、さいたま市浦和区は、大宮区とともに2013年以降人口増加が続いているが、2023年にはやや頭打ちの傾向を見せている。
 

      【図表3】4市区の総人口の2013~2023年の人口推移 ※4
 
    

 

 次に、これらの4市区それぞれについて、日本人および外国人住民の人口推移を見る。
 さいたま市大宮区、浦和区ともに、日本人人口は2021年以降も減ることなく緩やかに増え続けていることが分かる(図表4、図表5)。
 一方、外国人住民の人口について見ると、大宮区では首都圏の傾向と同様に、新型コロナ禍の2021~2022年※5にかけて減少しているが、2023年には増加に反転している。浦和区では外国人住民の人口は一貫して増加している。
 

      【図表4】さいたま市大宮区の日本人および外国人住民の2013~2023年の人口推移 ※4
 
    

 
 

      【図表5】さいたま市浦和区の日本人および外国人住民の2013~2023年の人口推移 ※4
 
    

 

 前述のさいたま市の2区と同様に、流山市、印西市のいずれも日本人の人口増加が継続しており、また外国人住民の人口も2022年にやや勢いが弱まるものの、2013年以降一貫して増加している(図表6、図表7)。
 

      【図表6】流山市の日本人および外国人住民の2013~2023年の人口推移 ※4
 
    

 
 

      【図表7】印西市の日本人および外国人住民の2013~2023年の人口推移 ※5
 
    

 

 以上からここで取り上げた総人口が顕著に増加している4つの市区では、外国人住民だけではなく日本人の人口が継続的に増加していることが分かる。

■交通利便性、生活利便性などの都市特性から人口増加を探索する
 次に、さいたま市の2区(大宮区、浦和区)と流山市、印西市の人口増加の要因について、東京駅からほぼ同距離にある東急線沿線の横浜市青葉区・都筑区を交えながら、考察してみたい。
 当社のこれまでの調べによれば、居住地選択(「住みたい」)において、交通利便性や生活利便性が重視されることが分かっている。その点を踏まえると、上記の6市区のいずれにおいても、乗り換えが1回程度で都心部に向かうことができ※6、また駅周辺の大型商業施設で買い物などを楽しむことができる。その意味で、これらの都市の間で魅力(誘因)に大きな差異はないように見える。
 そこで、昼夜間人口比率(通勤通学による昼間人口÷常住(夜間)人口)※7という指標を用いて、それぞれの都市の特色を見ることにする(図表8)。
 昼夜間人口比率が80%未満の流山市と横浜市青葉区は都心や周辺都市にある「職」に向かう典型的な郊外ベッドタウンであり、職住が分離したライフスタイルと言える。一方、90%以上のさいたま市浦和区、印西市、横浜市都筑区は「住宅・業務混在地」、130%を超えるさいたま市大宮区は「業務集積地」とそれぞれ分類でき、いずれもその都市内で職住近接のライフスタイルが可能と思われる。
 

      【図表8】6市区の昼夜間人口比率 ※7
 
    

 

 換言すれば、このような「職」と「住」の地理的関係がもたらすライフスタイルの指向性もまた、交通利便性や生活利便性とともに、住み替え時の居住地選択の重要な要因になると考えられる。

■人口増加と地価上昇は必ずしも連動していない
 最後に、これらの6つの市区における人口(需要)と土地(供給)の関係について見ることにする(図表9)。さいたま市の2区の公示地価(住宅地)※8は、人口増加と連動するように2013年以降上昇しており、その価格水準は2023年時点で横浜市青葉区、都筑区を上回っている。
 一方、流山市や印西市の公示地価(住宅地)は、人口増加とは連動せずに2014年以降ほぼ横ばいか微増の傾向である。このように、人口増加と地価の上昇は必ずしも連動しているわけではない。
 なお、流山市や印西市の価格水準はさいたま市の2区や横浜市の2区(青葉区、都筑区)と比べてかなり低く、今後も“手に届く”価格の住宅が安定的に供給されるならば、首都圏への人口集中の潮流にあって、当面の間、流山市や印西市では人口が増え続ける可能性が高いと思われる。
 

      【図表9】6市区の2013~2023年の公示地価(住宅地)の推移 ※8
 
    

 

 以上、首都圏で人口増加が続く郊外の4市区に着目して、簡単な考察を行った。
 次の最終回では、再び東急線沿線17市区に焦点を当てて、年代別の近年の人口動態について詳しく見ることにする。
 

※1 総務省公表の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の表記の通り。この「外国人住民」は住民票を有する外国人(個人番号の通知対象)であり、観光やビジネスを目的とする短期滞在は含まない。
   なお、図中では記述を簡素化するために「外国人」と記している。
※2 地図作成:東急総合研究所/地図情報著作権者:㈱技研商事インターナショナル、データ:人口統計マスター(国土地理協会)
※3 「SUUMO『住みたい街ランキング2023』首都圏版」(㈱リクルート社)および「住みたい街(駅)ランキング2022」(㈱長谷工アーベスト)のホームページまたはプレスリリースに基づき東急総合研究所が作成
※4 図表はいずれも、「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(総務省)に基づき、東急総合研究所が作成
※5 「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」にもとづく人口等は、各年の1月1日時点のものである。なお、日本での新型コロナ感染症(COVID-19)の拡大(略称、「新型コロナ禍」)は1月以降といわれており、住民基本台帳上の人口における「2020年(1月1日時点)」は、新型コロナ禍直前を示すものと考えられる。
※6 2015年3月のJR上野・東京ライン開通とそれに伴うJR常磐線の品川駅乗り入れにより首都圏の北部(JR高崎線・宇都宮線等)や東北部(JR常磐線、つくばエクスプレス等)から東京都心、とりわけオフィスビルが集積するJR山手線の東側へのアクセス性が向上している。
※7 国勢調査(2020年、総務省)に基づき、東急総合研究所が作成
なお、昼夜間人口比率100%超とは、昼間人口が常住(夜間)人口を上回る状態を示し、他地域から通勤通学により流入超過を意味する。同100%未満とは、反対に通勤通学により他地域に流出超過を意味する。
※8 国土交通省が公表している「地価公示」に基づき、東急総合研究所が作成。