たまにはスマートフォンから目を離して空を見上げてみよう!

2019年4月16日 / 主席研究員 岸 泰之

 朝夕の通勤電車の中で、人々の過ごし方を観察すると、例えば7人掛けのシートに座っている人のうち5~6人はiPhoneに代表されるスマートフォン(以下、「スマホ」と表現する)を操作している。あるいはスマホに取り込んだ音楽などを聞いている。また、ドア近くの人を見渡すと、やはり同じような比率で、何らかの形でスマホを操作している。
 「平成30年版 情報通信白書」(総務省http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd142110.html)によれば、2008年の初代iPhoneの販売以降スマホは急速に普及し、2017年におけるスマホの個人保有率は61%となっている。年代別にみると、50代以上においても個人保有率は上昇傾向にある。
 次に、スマホの平日一日当たりの利用時間についてみると、「平成29年版 情報通信白書」(総務省http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111120.html)(原典:「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査(総務省情報通信政策研究所)」)によれば、2016年時点で10~20代では平日一日当たり180分となっており、また30~50代でも60分以上である。
 そのスマホの用途をみると、10~60代で「メールの読み書き」は15~20分程度で変わらないものの、10~20代は「SNSを見る、書く」に時間を割いていることがわかる。また同年代ではそれに次いで「オンラインゲーム・ソーシャルゲームをする」の時間が多い。つまり、若い年代(世代)ほどスマホの特長である多機能を存分に享受している一方、世代が上がるに連れて限定的な利用をしている様子がみてとれる。まさに、冒頭に書いた電車の中の風景もそれに近い。
 このようにスマホは、便利な生活道具であり、私たちの今日の生活に不可欠な存在となっている。
 反面、「スマホ依存症」や「スマホ上のSNSを通じたトラブル」「駅や電車内でのスマホ利用によるトラブル・事故」「スマホの“ながら”歩きや自転車(あるいは自動車)運転中の事故」といったように、時として人々のスマホの利用スタイルは社会問題ともなっている。
 そのさまざまな社会問題の中でも、特に「スマホによる健康問題」を取り上げたい。
 例えば、Googleで「スマホ_体調不良」と入力すると、眼科、脳神経外科、整体、鍼灸などさまざまな立場から、スマホの使い過ぎによる健康問題がヒットしてくる。いわゆるVDT(ビジュアル・ディスプレー・ターミナルズ)症候群、別名テクノストレスといわれる身体的、精神的な諸症状である。具体的には、スマホを利用する際の下向き(もしくは目線を下に落とす)姿勢がもたらす首、肩(ストレートネック化)、背中の凝りと、それに起因する頭痛や手指のしびれ等の症状、あるいは至近距離のスマホ画面を凝視することによる眼精疲労やドライアイ、さらには脳疲労や自律神経の不調に起因する不眠症、慢性的な疲労感・倦怠感、食欲不振などである。これらの症状が進行すると、うつなどの精神疾患に至る、との指摘もある。また、2012年にはイタリアの最高裁が携帯電話の長時間利用による脳腫瘍を労働災害として認定した例もある。
 まさに、スマホのヘビーユーザーは健康と疾病(発症)の間の未病領域に身を置いているといえる。
 これらの健康問題の対策としては、適度にスマホ利用を止める(目を休ませる)、ストレッチをする、上記の症状を緩和させるブルーライト対応メガネを着用する、などが挙げられている。
 つまるところ、スマホの「ユーザーガイド・利用上の注意」をよく読み、適切な使い方を心がけるとともに、たまにはスマホから目を離して、顔を上げてみませんか、例えば空を見上げてみませんか、ということなのだろう。
 みなさん、今日の空は何色ですか?