コロナ禍での学びの変化について

2020年12月9日 / 副主任研究員 府中 裕紀

 コロナ禍において、すっかり定着した感のあるオンライン授業について話したい。

 当社では都内の2つの大学において、東急グループ各社の事業を実例とした企業経営に関する寄付講座の企画ならびに運営を行っている。平時は、実際に各社の社員が講師となり、講義のあとは活発な意見交換が行われている。しかしながら、本年度は新型コロナウィルス感染防止対策のため、すべてにおいてオンラインによる授業と決まった。

 すでに本年度のカリキュラムがほぼ固まっていた中、急遽オンラインによる授業設計の検討を開始した。当初「学びは対面で行うのがベストであり、おそらくオンラインでは学びの質が保てないだろう」というのが、私たちの率直な意見であった。開始時期は迫っている。とにかく私たちが責任をもって、オンライン授業で最大の効果をあげなければならない。どうしたらよいか?それには、自分が実践してみるしかないだろう。まず、知り合いの教員に聞き取りを実施し、セミナーを受講するなどして、オンラインのメリット・デメリット、実施にあたって困ったことなどを聞いてまわった。そうするといくつかの共通項が見えてきた。

 オンライン導入にあたって困ったことは、学生、教員どちらの立場でもさまざまだが、個人的に一番困ったことは、「相手の反応がわからない」ということだ。NII[i]が2020年9月に実施した教員向けの「遠隔授業に関するアンケート調査」[ii]においても、オンライン授業のデメリット(課題)の自由回答の部分で「学生の反応や理解度がわからない」という項目が490票(59.8%)あり、多くの教員が悩んでいることがわかる。一般的な対面授業であれば、教員は生徒の顔を見ながら理解度や興味を推測し授業を組み立てていく。一方、学生も教員の顔や発声を聞きながら、内容を理解していくのである。私も講師として相手の顔が見えない状況(カメラオフ)で授業を行ったが、相手が自分の話を聞いてくれているか心配になり、授業をしていても「暖簾に腕押し」のような気分になってしまった。これは双方にとってとても残念な事態となる。

 それではどうすれば解決するのか。顔が見えないなら、双方が話をして、声を聞くことだろう。それは発展的に「対話」を行うことなのだろうと考えた。近年、学校教育では、「アクティブラーニング」の検討が始まっている。「アクティブラーニング」とは文部科学省[iii]によると「教員による一方的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」とある。このほかにもさまざまな定義、解釈があるが、簡易的に説明するならば、学修者である学生が能動的に学ぶことができるような授業の構造である。導入手法もさまざまだが、私は、課題を出し、①個人で検討、②少人数でグループワーク、③みんなの前で発表という形とし、学校や関係各所と調整を行い、実施にこぎつけた。しかし、結果的に「主体的、対話的な学びは確かにできるが、学生にとってハードルが上がっていないか?」という心配もあった。

 授業初日、授業がスタートし、本日のお題を出す。学生がブレイクアウトセッションで無作為に選ばれたルームに分かれる。みんなの顔がこわばっている。無理かなと思った時、1人が話し始めて、会話が生まれ、ふくらみ、どのグループも十分な内容で発表をすることができた。また、最初はなかなか自発的に発言できなかった学生も回を重ねていくうちに積極的に発言するようになっていった。これもアクティブラーニング導入の効用であろう。

 幸い、本授業は学校、学生ともに、反応が良いそうだ。同時に、本年の一連のコロナ禍に伴う、いわば強制的な学びの変化への学生の対応力も素晴らしいと思う。最終的には、どんな手段であれ、「学びを止めない」ということが一番大切と思った一年であった。

 

ⅰ 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所

https://www.nii.ac.jp/event/other/decs/#17

ⅲ 文部科学省・中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」(平成24年8月28日)