気候変動対策も大事ですが・・・

2019年10月21日 / 主席研究員 大東 一裕

 「サステナブル」という言葉を聞く機会が増えている。「人間・社会・地球環境の持続可能な発展」を意味するが、地球環境の悪化が顕著になっていることが一つの要因と思われる。
 よく耳にするのは、猛烈な強さの台風の発生やゲリラ豪雨など、「数十年に一度のレベル」と言われる「極端な気象」であるが、この極端な気象は、世界的な人口増加と生活レベルの向上により、石炭や石油等のいわゆる「化石燃料」の使用量が増加し、温室効果ガスが大量排出されたことが原因とされている。この使用量の削減に向けては、2015年12月12日に採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定「パリ協定」で、世界各国の積極的な取り組みが求められ、日本も政府をはじめ官民をあげて進められている。
 一方、最近話題になることの多い社会的課題としては、「海洋プラスチックごみ汚染」もある。この問題を私が最初に認識したのは約2年前のことである。ある人に、国際的な環境課題となっている海洋ごみ問題のための啓発セミナーに誘われた。そこで、太平洋の聖域とされるミッドウェーにおける現地の悲惨な実態を見せられ、プラスチック等の海洋ごみが貴重な海の生態系を脅かしていることに驚かされた。
 この海洋プラスチックごみ問題については、その時点では意外と海にごみが多いことと、このごみをエサと勘違いして食べてしまう野生生物が相当数いるということを感じていたが、その後「2050年、世界の海鳥の95%が海洋プラスチックごみの被害を受ける」、「2050年までに海に漂うプラスチックごみの重量が、魚の総重量より重たくなる」(2016年1月、世界経済フォーラム)という話を聞くと、地球温暖化による気候変動対策も大事であるが、こちらの対応についても待ったなしの課題のように思える。
 この海洋プラスチックごみ問題の深刻さは、エサとして食べた海洋生物に影響する大きなプラスチックよりも、紫外線や波の力で5mm以下に小さくなったマイクロプラスチックにある。現在の技術では海洋に浮遊するマイクロプラスチックは回収できず、ずっと海洋中のどこかに存在し続けるという。プラスチックは、もともと製品の劣化を抑えたり、燃えにくくする添加剤が含まれているだけではなく、化学物質を吸着する性質がある。小魚や貝がマイクロプラスチックを取り込み、それを大きな魚が摂取し、最終的に人間が間接的に取り込む可能性が十分考えられる。
 海洋に流出するプラスチックごみ発生量(2010年推計)は、1位中国、2位インドネシア、3位フィリピン、4位ベトナムと、東アジアの国が上位を占めている。このことから、日本周辺海域にたくさんのプラスチックごみが浮遊しているということを容易に想像できるが、実際日本周辺海域のマイクロプラスチックの分布密度(個/k㎡)を見てみると、全海洋の27倍もの密度になっている。
 マイクロプラスチック問題に関して、世界では2018年のG7シャルルボア・サミットにて、「プラスチックの製造、使用、管理及び廃棄」に関する「海洋プラスチック憲章」が提案され、採択されている。また、すでに45か国以上の国でレジ袋の使用禁止が批准されている。さらに、欧州議会では代替可能な使い捨てプラスチックの使用が2021年には禁止されるという。
 しかし、日本ではあまり対策が進んでいるとは言えない状況が続いていた。最近になって、ようやくスーパーのレジ袋やストロー等の使用量を削減する動きが出てきたり、2019年5月31日付で「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」が発表される等、取り組みが少しずつ動き始めているものの、インドではレジ袋の製造や使用、容量500ml以下のペットボトルの禁止が発表され、中国でもレジ袋の使用禁止などを導入する等プラスチックごみの海への流出量が多いとされるアジア諸国における対策には届いておらず、世界の潮流からは温室効果ガス削減と同様、後れをとっている。
 日本人は、太古の昔より海から魚を採って食べており、2000年代初めまで世界一の魚食国だった。その後若い世代の魚離れにより、魚介類から肉類へ消費のシフトが進み、2005年と2017年の一人あたりの消費量を比較すると、肉類が18%増加しているのに対し、魚介類は▲31%と大幅に減少しているが、日本食に欠かせない食材であることに変わりはない。
 2013年に「和食」としてユネスコ無形文化遺産に登録された、伝統的な魚食文化の維持のためにも、「有毒な化学物質が吸着しているマイクロプラスチックを摂取している海の魚は食べられない」ということが現実にならないように、早急かつ有効な対応が待たれるところである。