2018年度

9.非上場会社のコーポレートガバナンスと新しい経営モデルの潮流

                                                    専門研究員 永瀬 巌

1.研究の背景・目的
 企業の不祥事については、会社の大小を問わず発生しているが、上場企業においては法律等で内部統制システムの構築が求められてきた。
一方、日本の会社の大半は非上場の中小企業であり、法的な義務や人的リソースが少なくガバナンスが効きづらい面があるうえに、所有と
経営が一致するケースが多く、自己監査に陥りがちである。
 続いて、近年、「コーポレートガバナンス・コード」等が相次いで策定され、「企業の
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」に資する、いわゆる「攻めのガバナンス」のための仕組み作りが求められるようになったが、
基本的にはこれらは上場企業を対象としたもので、非上場会社にとっては、例えば、社外取締役の確保など必ずしもそのまま使えるものでは
ない。
 一方、日本は世界一ファミリービジネスが発展した老舗大国であり、近江商人に代表される「三方よし」などの家訓、経営理念を守り長く
事業を営んできた会社や、自らの事業を通して環境問題などの社会課題の解決にも挑戦し、持続的な成長を目指す会社の事例も多くみられる。
 そこで、非上場会社に対し、「守り」「攻め」それぞれに有効なガバナンスを提案するとともに、社会・環境リスクが増大している中で、
新しい経営モデル、手法を紹介する。

2.研究テーマ
(1)さまざまな企業不祥事に対応する実効ある非上場会社の「守りのガバナンス」の提案
(2)非上場企業にとっても有効な「企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」に資する「攻めのガバナンス」の提案
(3)新たなグローバルリスクとして社会・環境リスクが増大している中で、CSVやコレクティブ・インパクトなどの新しい経営モデル、
手法の紹介

3.調査概要
(1)ファミリー企業、老舗、さらには事業を通して社会課題の解決にも挑戦し、持続的な成長を目指す非上場会社等の訪問調査
(2)ファミリー企業や中小企業の専門家ヒアリング
(3)文献購読、資料分析、等