2016年度

1.東急線沿線における都市型日本旅館の可能性

主任研究員:川上 剛彦

(1)研究の目的・背景
日本旅館は、古くから親しまれてきた日本特有の宿泊施設であり、貴重な文化資源でもある。しかし近年、外資系ホテルチェーン、国内大手ホテルチェーン等との厳しい競争といった外的要因の他、人手不足・後継者不在・耐震化改修などの法的義務による負担等の内的要因を背景に廃業を余儀なくされる例は多く、旅館の数は減少の一途をたどってきた。
そのような中、旅館業に追い風といえる動きもみられる。訪日外国人、いわゆるインバウンドの急増である。日本旅館は、日本文化を体験・体感できる場としても観光客の関心は高く、宿泊需要の受け皿となるだけではなく、旅館そのものが観光資源にもなっている。
一方、日本旅館は「食泊一体」の料金体系や利用上の慣習など、外国人にとってなじみのない特有の慣行・慣例などが利用障壁となっているとの指摘があるほか、旅館を経営・運営する事業者の視点からは、不慣れな外国人利用客への対応に苦慮する声も聞かれる。
インバウンドの需要拡大により、渋谷をはじめ東急線沿線において、宿泊施設対策が課題としてあげられるが、観光資源としての側面も併せ持つ旅館が、その解決策の一端を担うことも考えられる。
以上を踏まえ、本調査研究では、日本旅館、とりわけ東急線沿線におけるあり方も意識した都市型の日本旅館に着目し、取り巻く環境や利用及び運営の実態、課題や展望などに関する情報収集・考察を通じ、その可能性と具体的な展開イメージについて検討、提案を行った。

(2)研究テーマ
①旅館を取り巻く現状と課題
②都市型日本旅館の可能性
③国内外からの日本旅館へのニーズ、求められるスタイル
④事業者側の意向、問題点・課題
⑤有望な日本旅館のモデル(成立可能性が高い場合のモデル)と考え得る展開方法

(3)調査概要
①既往研究レビュー・文献調査
②統計加工・分析
③アンケート調査(国内旅行者、海外旅行者、旅館事業者、有識者)
④試泊調査